自由研究

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枝豆について

皆さん、お待たせいたしました。課題提出期間が終了した講義のレポートを載せたいと思います。大豆から枝豆へフォーカスしていきます。

 枝豆について

序論 大豆から枝豆に焦点をあわせる

 大豆の用途は多岐にわたるが、我々日本人は枝豆(登熟種子)の時点ですべての大豆を収穫している場合ではない。では、昔の農家はどういった配分で枝豆の収穫量、大豆の収穫量、種用の量を決めてきたのだろうか、という疑問を出発点に大豆について調べた。レポートの内容を考えるにあたり、大豆は「Soy beans」だが枝豆は英語で「Edamame」と訳されることを知った。そのため、授業でのフィッシュアンドチップスで取り上げられたように、大豆が枝豆の時点でいつ、どこで食されるようになったのかについて調べた。
 このレポートでは、本論第一節では、現代の大豆農家は収穫した大豆の何割を枝豆にしようか悩んでいるのか予想する。予想するにあたり、大豆の生産は利用目的に適した品種を用いていることをもとにした。また、大豆の用途の多種多様さについて述べ、枝豆と大豆の区分の違いにも触れる。第二節では、大豆を枝豆の時点で食べるのは日本独特の文化だといわれているが、日本独特の文化とは言い難い事実を述べる。

本論 枝豆について

第一節 枝豆と大豆の分類と生産

 

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 図 1 の通り、大豆の利用形態は発芽種子・登熟種子・完熟種子の3 つがある。そのうち、枝豆は大豆の登熟種子の過程で収穫される野菜である¹。大豆といった場合、大豆が完熟種子になったときに収穫される豆類である。そのため、作物統計を見る際は枝豆と大豆の分類について知っておく必要がある。厳密にいえば、大豆の加工食品には完熟種子形態の大豆が図 1の通り利用されているといえよう。しかしながら、大豆は多種多様な食品加工ができるにも関わらず、世界での直接的食料消費は約6%前後で、大豆の約94%は搾油用や飼料用で消費される。一方で、日本国内で生産された大豆はほぼ全量が食用で消費されている²。その内訳は、図2の通りである。

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 また、大豆の品種の分類には、用途に基づく分類と形態的特性に四つ分類がある。用
途に基づく分類では、たんぱく質などの子実成分の多少や、子実の大きさ・形・色などにより、豆腐用、味噌用、納豆用、煮豆用、きな粉用、もうやし用、枝豆用などに分類される³。実際、枝豆と大豆の主要品種を表1⁴と表2比較したところ、大豆と枝豆で兼用されている主要品種はなかった。

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 以上のことが分かった結果、大豆は大豆農家、枝豆は枝豆農家によって生産されている可能性が高く、現代の大豆農家は収穫した大豆の何割を枝豆用、大豆用にしようか悩んでいるわけではないことが予測できた。ちなみに、大豆の利用は食用・飼料用以外に化学工業の原料としても利用されている⁵。

第二節 枝豆は日本独特の食文化といえるのだろうか

 日本経済新聞の記事によれば、和食が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたことを受け、2013 年 12 月に、海外でのローマ字入力の回数を集計したところ、2013 年 1~11 月に海外でインターネットの検索サイト・グーグルを使って検索された和食のキーワードで、2 番目に多かったのは枝豆だったことが分かった。6大豆は「Soybeans」だが枝豆は英語でも「Edamame」と訳されることを知った。まるで日本独特の食文化、つまり枝豆は和食であるといわんばかりだ。しかしながら、「大豆発祥の地である東アジアでは、4000 年以上前から大豆の選別と利用が行われ、各地に種々の利用法が発達した。生の大豆は臭いや味が食品として適さないことから加熱したものが利用され、炒り豆や煮豆が最も初期の利用法であったと思われる。」⁷ということなのだから、いつ頃日本で大豆が枝豆(登熟種子)の時点で食べられ始めたのか、日本以外の東南アジア諸国では枝豆が食べられていないのか解明しなければ枝豆は日本発祥、日本独特だとは言い難い。
 はじめに、いつ頃日本で大豆が枝豆の時点で食べられ始めたかについて述べる。文献を調べた結果大豆が枝豆として利用がいつ頃なのから行われたのか明らかでないことがわかった。

 枝豆としての利用がいつ頃から行われたのか明らかでない。『延喜式』には内膳司からの生産物として生大豆六把との記録があり、平安朝時代から用いられていたのかも知れない。鎌倉時代文永三年(一二六六)七月、美乃庄の貢納物として瓜、茄子、子芋、枝大豆等三籠とあり、枝豆という呼び方が当時あったかと思われる。さらに時代は下るが、『本朝食鑑』(一六九七年)には八月一五日の中秋明月に芋子と莢豆を食べるとあり、『和漢三才図会』には黄大豆を莢葉若き時食す可としとある。なお明和の頃(一七六五)枝豆売りが始まったともいわれる。⁸

  生大豆や枝豆という言葉が古い書物に記されていても、陰暦九月一三日の月を豆名月ともよび、古くから枝豆を供える習慣があった⁹ことから、すぐに枝豆の記述を食用だと判断するのは安易な考えである。そのため、平安時代から枝豆として利用されていたとは断定できない。断定できるとするならば、前述の通り 17 世紀末頃であろう。

 次に、「エダマメとして食べる文化は日本独特といわれる。」¹⁰の裏付けが不十分さについて述べる。日本以外の国では大豆(完熟種子)では食べられても、枝豆(登熟種子)としては食べられていないことを明確にしなければならない。ところが、日本大百科全書には、大豆の登熟種子での利用は、海外では中国中部から北部で多く利用され、インド、マレーシア、インドネシアのジャワでも食用とされる¹¹という記述がある。つまり、大豆を枝豆、登熟種子の時点で食すのは日本独特の文化とは言い難い。
 また、豆類の登熟種子時点での利用は日本、東南アジアに限らずヨーロッパの地域でも見られる。豆類の登熟種子時点での利用例は、むき身で食すグリンピース(エンドウ豆)、若莢のまま食すサヤエンドウ(エンドウ豆),サヤインゲン(インゲン豆),ソラマメがある。ある食材の調理法を他の食材に用いることは十分に考えられる。そのため、豆類の登熟種子時点での利用はどこで、いつごろから始まったのか解明する必要がありそうだ。

結論 枝豆は日本独特の文化とは言い難い

 本論第一節では、現代の大豆農家は収穫した大豆の何割を枝豆にしようか悩やんでいるわけではないと、農家が用途別に品種を使い分けていることから予想した。第二節では、枝豆が日本でいつ頃から食べられているのか定かではないこと、日本以外の東南アジアの国々でも大豆が枝豆の時点で食べられていることを根拠に、大豆を枝豆の時点で食べるのは日本独特の文化とは言い難いという結論にいたった。
 今後の課題としては、いつから大豆が枝豆(登熟種子)時点で食すようになったのかという大豆の登熟種子に限定するのでなく、いつから人類が豆類を登熟種子の時点で食すようになったのかという広い視野を持ち研究することが課題である。また、大豆並びに枝豆の用途について、神饌、習俗・祭事に触れられず網羅的でなかったことは今後の課題だ。

感想

 食の社会学・文化研究の講義では、フィッシュアンドチップスや寿司を例に「○○発祥」は疑ってかかれと教えられた。レポートで枝豆がいつ頃、どこで食べられるようになったか調べるにつれ、それが枝豆にも当てはまることがわかり、「○○発祥」を鵜吞みにせず懐疑的にとらえ、調べる必要があるのか再確認した。また、「○○発祥」を鵜呑みにし、自民族主義に片足を突っ込んでしまうのは、発祥とはいわれていない国の食文化に関する情報不足、発祥といわれる国の食文化には詳しいといった情報の偏りが原因だろう。そのため、発祥に限らず物事をみるときは疑い、多角的に見る姿勢をつらぬきたいと思う。

 

((((ここに脚注を書きます))))

¹⁾農林水産省 HP から作物統計をみると、作況調査(野菜)に枝豆があり、大豆は作況調査(水陸稲、麦類、豆類、かんしょ、飼料作物、工芸作物)にあり分類が異なる。

²⁾ 五日市哲雄・久保田博南,2018,『おもしろサイエンス大豆の科学』,日刊工業新聞,p.30.
³⁾高橋浩司,2012,『食物と健康の科学シリーズ――大豆の機能と科学』「2.大豆の生物学」,朝倉書店,p.20.

⁴⁾ 表1において都道府県別で5県しか記されていないことに疑問を思うかもしれないが、大豆、とりわけ枝豆にいたっては全国で生産されているわけではない。詳しくしりたい場合は表1の転載文献を参照。
⁵⁾星川清親,1985,『日本大百科全書 14』「大豆――食品と利用」,小学館,p.425.

⁶⁾ 日本経済新聞,2014,「海外で『エダマメ』じわり人気――『和食』ネット検索2位」,日本経済新聞ホームページ,(2021 年 7 月 16 日取得,https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG01039_R00C14A5CR8000/).
⁷⁾小野伴忠,2012,『食物と健康の科学シリーズ――大豆の機能と科学』「1.大豆利用の歴史学」,朝倉書店,p.1.
⁸⁾青葉高,2013,『日本の野菜文化史辞典』,八坂書房,pp.110-111.
⁹⁾星川清親,1985,『日本大百科全書3』「枝豆」,小学館,p.513.

¹⁰⁾八巻孝夫発行,2006(2001),『食材図典Ⅱ』,小学館,p.151.
¹¹⁾ 星川清親,1985,『日本大百科全書3』「枝豆」,小学館,p.513.

転載・引用・参考文献

【図の転載文献】

図1:[大豆の加工食品]

五日市哲雄・久保田博南,2018,『おもしろサイエンス大豆の科学』,日刊工業新聞,p.32. より転載し、『大豆の機能と化学』を参考にしながら筆者が「発芽種子・登熟種子・完熟種子」と図に付け加えた。
図2:[国産大豆の用途の内訳]
五日市哲雄・久保田博南,2018,『おもしろサイエンス大豆の科学』,日刊工業新聞p.30. の記述より筆者が作成した。

【表の転載文献】

表1:[都道府県別、枝豆の主な品種]
農畜産業振興機構,2019,『野菜ブック――5.豆類(1)えだまめ』,pp.142-145,(2021 年 7 月 17 日取得,https://www.alic.go.jp/content/001162863.pdf).より転載した。
表2:[大豆の品種の作付け順位と主要用途]
高橋浩司,2012,『食物と健康の科学シリーズ――大豆の機能と科学』「2.大豆の生物学」,朝倉書店,p.18.より転載した。

【引用・参考文献】

1. 青葉高,2013,『日本の野菜文化史辞典』,八坂書房.
2. 五日市哲雄・久保田博南,2018,『おもしろサイエンス大豆の科学』,日刊工業新聞社 .
3. エニグ,ジャン=リュック,1999,『[事典]果物と野菜の文化誌――文学とエロティ
シズム』(小林茂・明石信子・綾部素幸・尾河直哉・折橋浩司・加藤雅郁駿河昌樹・
田中訓子・善元孝訳),大修館書店.
4. 小野伴忠・下山田真・村本光二編,2012,『食物と健康の科学シリーズ――大豆の機
能と科学』,朝倉書店.
5. 小泉武夫,2002,『食と日本人の知恵』,岩波現代文庫.
6. 前田和美,2015,『ものと人間の文化史――174・豆(まめ)』,法政大学出版局.
7. 八巻孝夫発行,2006(2001),『食材図典Ⅱ』,小学館.
8. 渡辺篤二監修,2004(2000),『豆の辞典―その加工と利用―』,幸書房.
9. 『日本大百科全書』,小学館.